45 鋼の不動態化とリン酸塩処理の違いは、工程の問題になる前に図面の問題です。中炭素鋼のブラケットでは、不動態化はクロムを多く含む皮膜を残しません。その皮膜が再び形成されることもありません。合う仕上げは通常、リン酸塩処理か黒染めです。後処理の経路は、工場の既定ではなく図面の指示に従います。
ステンレス鋼の不動態化は酸洗いで、その後、不動態皮膜が再形成されます。合金が酸化物を組み直せるだけのクロムを保っているからです。GB/T 699-2015 の 45 鋼は、840~860 °C で焼入れし、550~600 °C で焼戻して硬さ 220~250 HB にします(いずれも一般的な範囲)。この鋼には、そのクロムの蓄えがありません。酸浴は遊離鉄とスケールを落とします。残るのは清浄な炭素鋼で、湿った部屋ではすぐに赤錆が出ます。
それでも、この語は炭素鋼の図面に出てきます。意味は通常、二つのどちらかです。亜鉛めっきの後の不動態化なら、作用するのは鋼ではなくめっき層です。もう一つは、化成処理という言葉を緩く使ったもので、指しているのはリン酸塩処理という場合です。どちらの読みも、その語だけから決めるのは安全ではありません。
不動態化、リン酸塩処理、黒染めは、表面に残すものが違います。同じ合格判定の一行では扱えません。図面でどれかを選ぶとき、三つを分けて見るのが次の表です。
図面の指示 | 45 鋼に残るもの | 適した使いどころ | 受入検査 |
|---|---|---|---|
不動態化 | 裸の鋼には皮膜を残さない。めっき層の上だけ薄い皮膜 | ステンレス部品、または亜鉛めっき後の炭素鋼 | 遊離鉄とウォーターブレイク |
リン酸塩処理 | 油を保持する灰色のリン酸塩結晶層 | 油を塗布する、または塗装する裸の 45 鋼 | 被覆の有無と図面の皮膜等級 |
黒染め | 油を含ませて保つ薄い黒色酸化皮膜 | 屋内で扱い、黒い仕上げを求める場合 | 色、油膜、拭き取りによる確認 |
このブラケットでは、三つとも同じ前処理を通ります。取付面を削る前に ISO 8501-1 の Sa 2.5 までブラストをかけ、削った後に仕上げます。ブラストは表面を清浄にする工程です。どの仕上げにするかを選ぶ工程ではありません。
このブラケットの金属鋳造は、最後の仕上げを図面の確認待ちで止めます。工場側に選ぶ根拠がないからです。同じ図面には設計目標がすでに載っています。≥355 MPa の降伏強さと、±0.2 mm の穴ピッチです。仕上げの一行も同じ場所に置き、隣に規格番号を書きます。
いつもの仕上げに戻る工場は、見た目は正しく、受入検査で落ちる部品を出荷します。検査員は表面を指示と照らし合わせます。「表面処理」と書けば、返ってくるのは質問です。工程を表す一語と規格を書けば、返ってくるのは経路です。
発注書は、仕上げについて図面の語をそのまま繰り返してください。言い換えてはいけません。言い換えは、輸送の途中でリン酸塩処理が不動態化に変わる場所です。
大半の事例は、二つの失敗で説明できます。図面が不動態化を指示し、工場がリン酸塩処理をした場合、検査員が裸の金属を期待した場所に灰色の結晶面が出ます。試験を回す前に、外観でロットが不合格になります。図面がリン酸塩処理を指示し、工場が酸洗いをした場合は、バリアのない裸の鋼が出荷されます。輸送中か倉庫で錆びます。
どちらの場合も、部品は皮膜を落として仕上げ直すか、仕上げを逸脱として記録したうえで、特採になります。費用はロットに載ります。外観を問わない油塗布の部品が乾燥した倉庫にあれば、違いは表に出ないかもしれません。それでも、次の発注の前に図面は直してください。
図面には分類ではなく、工程を表す一語を書いてください。判定に使う規格を添え、指示の下にめっき層があるかどうかを明記し、ロットを出す前に、その仕上げの試片か初品を求めてください。この部品では仕上げは取付面の機械加工の後に来るので、試片は、同じブラストと同じ切削を経た部品から取ってください。
図面が黙っていれば、見積の回答は仕上げについての質問になります。その質問はメール一通で済みます。既定を間違えれば、ロット一つと、皮膜を落とす手間と、二度目の検査がかかります。
仕上げの一行を書いた図面を送り、その一行を規格ごと見積で繰り返すよう求めてください。