ADC12 の T6 熱処理は、高圧ダイカストの工程でも成立します。ただし、決めるのは合金ではありません。490~510 °C の溶体化処理は、閉じ込めたガスをブリスターに変えます。ブリスターを出さない条件は、真空の補助、低い含ガス量、そして部品と同じ溶解から鋳た試験片の三つです。400 MPa は、工場側の確認が取れるまで目標値のままです。
T6 は、溶体化処理、焼入れ、時効の三つの工程からなり、それぞれの役割が違います。まず 490~510 °C で保持し、銅などの溶質を固溶させます。次に焼入れして過飽和の状態を保ち、最後に 150~170 °C で時効して、強度を担う析出物を出します。1.5 mm のフレームでは、このサイクルは寸法が動く工程でもあります。薄い壁はジョイントのボスより早く熱くなり、早く冷えます。そのため、強度と同時に変形と残留応力が生じます。この保持は、充填のときに残ったガス孔の内圧も上げます。表皮のすぐ下に孔があれば、それが表皮を持ち上げてブリスターになります。490~510 °C と 150~170 °C の温度窓は製品表の値です。この部品でその窓を保てるかは、工場側の確認事項です。
ガスは熱処理ではなく、充填のときに巻き込まれます。1.5 mm の壁を満たすには、速く乱れた湯が必要です。その流れが空気と水素を鋳物に折り込み、金型はガスが抜ける前に表面を閉じます。溶体化の温度では、閉じ込めたガスが膨張し、合金は軟らかくなります。孔が表皮を押し上げます。温度窓に入った炉の記録は、これを防ぎません。温度窓を守ったことを示すだけです。前提になるのは真空ダイカストです。充填時のガス量を下げるので、同じ T6 でも膨張する量が減ります。順序は真空が先、注湯が後です。ブリスターが出てから保持を延ばしても、何も直りません。含ガス量が高いままなら、時効の条件を変えてもバッチは救えません。
違いは充填の方式です。A356 は通常、重力鋳造で鋳ます。湯がゆっくり入るので空気が抜ける時間があり、引けは押し湯が補います。A356 の T6 が日常的な処理で済むのは、鋳造が最初からガスの少ない状態で始まるからです。ADC12 は高圧ダイカスト用の合金で、薄肉を成立させる力は、閉じた金型の中で速く充填することから来ます。ADC12 は流動性と耐摩耗性のために珪素を多く含み、強度のために銅も含みます。T6 で得られる強度の幅は、A356 より狭いままです。ADC12 に T6 を指示することは、別の工程を買うことです。真空の補助、単一キャビティ、ガスの検査が必要で、A356 の熱処理条件を写しても同じにはなりません。図面が T6 を要求し、形状が重力鋳造を許すなら、鋳造材料と工程を一緒に変えます。
400 MPa は T6 後の引張強さの目標で、鋳放しの ADC12 の性質ではありません。この数字を正確に扱うための書類が二つあります。ASTM B85 は材種と化学成分を定めますが、T6 で出る強度には触れていません。引張の結果は、部品と同じ溶解から鋳た試験片を ASTM B557 で引いて出ます。だから証明書の数字は、鋳物と同じ溶解から出た値です。図面の目標と証明書の値は、別の指示です。両方を書きます。400 MPa は設計目標、試験片は合否の基準、その横に状態(T6 か T5)を書きます。400 MPa を超えた試験片は、すべての鋳物を約束する根拠にはなりません。試験片から離れた壁は冷え方が異なり、証明書はその壁について語れません。
工程 | 値 | 単位・記録 | 決まること |
|---|---|---|---|
溶体化処理 | 490~510 | °C | 溶質が固溶し、ガスが膨張を始める |
時効 | 150~170 | °C | 図面に合わせた析出サイクル |
引張目標 | 400 | MPa | 設計目標で、鋳放しの値ではない |
試験片 | ASTM B557、同一溶解 | 方法 | バッチの強度の根拠 |
内部スキャン | X線または CT | 画像 | ブリスターになるガス |
T6 のバッチを妥当だと示せるかは、三つの記録で決まります。同一溶解の試験片を ASTM B557 で引けば、引張の数字が出ます。X線または CT は、溶体化がガスをブリスターに変える前にガスを示します。だからスキャンは T6 の前に置きます。完成品のブリスター分布図が、最後の確認になります。スキャンが、工程では除けないガスを示したら、T5 に切り替えます。時効だけを行い、溶体化の保持を飛ばして、強度の目標を下げる選択です。これは図面の変更です。状態、目標、合否の方法は、連動します。合金と ASTM B85、T6 か T5 の状態、400 MPa の目標、ASTM B557 の試験片、CT の範囲、工場側の確認事項を、図面と見積依頼(RFQ)に書きます。