高圧ダイカストで 1.5 mm の ADC12 壁は保てます。ただし、壁を決めるのは壁厚の指示ではありません。真空ダイカスト、単一キャビティ、薄肉部に向けて置いたゲートとオーバーフロー、そして T6 の後に削るデータムの四つが揃って、はじめて壁が保ちます。この厚さの薄肉アルミダイカストは、充填の窓そのものです。四つのうち一つでも動けば、窓は閉じます。
1.5 mm では、キャビティが充填し終わる前に湯が固まり始めます。このフレームは 320×180×90 mm、1.2~1.8 kg で、最後に充填する点はゲートから遠い位置になります。そこまで届かせるためにゲート速度を上げると、ゲートを出た湯が空気をより多く巻き込みます。
この壁はこのフレームの設計目標で、実際に使う金型と機械に照らして確認する値です。カタログに載っているのは壁厚の範囲で、1.5 mm の荷重を受けるフレームの合格を保証するものではありません。壁の指示だけを根拠にした見積は、壁を押さえても充填を落とします。
真空ダイカストは、ショットの前にキャビティ内の空気を抜きます。押し湯でガスを外へ出せない薄い壁では、残ったガスがそのままポロシティになるからです。単一キャビティなら、この条件がショットごとに同じまま保たれます。ゲートは一つ、オーバーフローの経路も一つ、最後に充填する場所も一つです。キャビティを増やせば、金型費が分かれ、ベントの条件も分かれます。
ゲートは厚いジョイントのボスに落とし、オーバーフローは 1.5 mm 壁の末端に置きます。湯先がそこで止まらず、キャビティの外へ出るためです。金型は H13 で、この壁に合わせて最初から削ります。厚い部品から流用した真空ダイカスト用の金型はゲート位置が古いままで、末端の湯は冷えたまま流れます。
壁そのものの上にゲートを置くと、真空では救えません。湯が 1.5 mm の断面を洗い、湯先が二つに割れます。
コールドシャットは、二つの湯先が接したまま溶着しない状態です。鋳放し面では細い線として見え、たいていは最後に充填する場所に出ます。ボスの内側のように、誰も見ない位置に残ることもあります。充填不足は、そもそも形にならなかった部位です。
塗装はその線を隠し、機械加工は線を削り取れます。だから合否は X線/CT で、薄肉の末端にスライスを置き、鋳放し面と突き合わせて読みます。外観検査だけで通せば、塗装の下にコールドシャットを抱えたフレームが合格になります。
T6 はどちらの欠陥も直しません。490~510 °C の溶体化処理は、溶着しなかった湯先を接合しません。閉じ込めたガスによるブリスターのリスクも加わります。
1.5 mm の鋳放し壁は、クランプすると動きます。抜き勾配が付き、面は湯の流れに沿って変化するので、そこに取ったデータムは段取りごとに違う値を読みます。ジョイント座面とアクチュエータ面は機械加工面です。±0.02 mm の組立面、0.03 mm の平面度、±0.02 mm の穴位置は、その加工面に置く設計目標です。
工程の順序は決まっています。真空ダイカスト、ゲート切断、T6、矯正、CNC後加工です。矯正が炉と切削の間に入るのは、焼入れで生じる変形がフレーム全体を動かすからです。切削は小さな取り代を外す工程で、ねじれたフレームを引き伸ばして真っ直ぐにする工程ではありません。鋳放し壁にデータムを置くと、三次元測定機(CMM)の値はクランプ圧に従います。±0.02 mm は、部品ではなく押さえ方を測った数字になります。
「1.5 mm 壁、ADC12」とだけ書いた図面は、工程の判断を供給側に渡します。壁を成立させているのは工程です。壁は目標として書き、それを再現する条件を並べます。ADC12(ASTM B85)、真空ダイカスト、H13、単一キャビティ、ゲートとオーバーフローの位置、末端の CT 合否基準です。
強度と熱処理も、目標として同じ図面に載せます。400 MPa は T6 後の引張強さの目標で、図面にも目標と書きます。T6 の条件は 490~510 °C の溶体化と 150~170 °C の時効で、実現できるかどうかは発注前に工場側が確認します。
指示項目 | 値(単位) | 図面の書き方 |
|---|---|---|
壁厚 | 1.5 mm | 設計目標 |
合金 | ADC12(ASTM B85) | 材種と規格 |
鋳造方式 | 真空ダイカスト、単一キャビティ、H13 | 工程の要求 |
充填の合否 | 末端の X線/CT | スライス位置を明記 |
組立面 | ±0.02 mm、平面度 0.03 mm | 目標、機械加工面 |
引張目標 | T6 後 400 MPa | 目標値、実測値ではない |
T6 条件 | 490~510 °C、150~170 °C | 工場側が確認 |
データムの指示、CT のスライス位置、目標として書いた 1.5 mm を揃えて図面を送ってください。三つに答えている見積は比較できます。壁の値にだけ答えている見積は、比較の土台に載りません。