Zamak 5 に PVD(物理蒸着法)の皮膜は付けられます。制約になるのは合金ではありません。制約になるのは、搬入されたときの表面と、上層の皮膜の下にある層構成です。Ra 0.5 に届き、開いたポロシティがなく、マスキングする面を正しく選んだ亜鉛ダイカストなら、装飾用の PVD ラインを問題なく通ります。ゲート部にくぼみが残っていたり、研磨でエッジが 0.1 mm 丸まっていたりする品は不合格になり、コーティング工程では直せません。
Zamak 5(ASTM B86 AC41A)は、亜鉛ダイカストの装飾用 PVD における標準的な基材です。処理は基材温度 120~150 °C 程度で行われ、合金の組織が動く温度よりはるかに低い条件で、0.5~3 µm の皮膜を積みます。
判断すべきは「コーティングできるか」ではなく、「表面と層構成が適切か」です。決め手は三つあります。研磨された表面、開いた気孔がないこと、そして上層の皮膜の下に名前の付いた層構成があることです。
PVD は直線的な堆積方式です。金属の蒸気が表面に届いて凝縮し、乗った形をそのまま写し取ります。凹みに流れ込むことも、キズを平らにすることも、気孔を塞ぐこともありません。研磨された表面の形状が、そのまま皮膜後の部品の形状になります。
つまり基材が支配的な変数です。同じ金型から出た二つの部品でも、可視面をどう研磨したか、ゲート部で気孔が開いたかどうかで合否が分かれます。コーターが見るのは結果で、原因ではありません。
Ra 0.5 µm は算術平均です。表面に 6 µm の山が残っていても、Ra は 0.5 と読めます。その山を表すのが Rz で、範囲の上限では、皮膜は山から谷までの距離より薄くなります。
実務で使う組み合わせは Ra 0.5 と Rz 2~4 です。Ra は満たしているのに Rz が 6 にとどまる表面は、皮膜の後にキズが見えます。皮膜は谷に沿って乗り、山を露出させたままにするからです。図面には二つの数字を載せてください。片方だけでは足りません。
径 20 µm の開いた気孔は、皮膜厚さの 6 倍から 40 倍あります。皮膜は表面だけでなく気孔の壁にも付くため、気孔は気孔のままで、皮膜後は直射光の下で暗い点として見えます。
同じことはコールドシャットの線、引きキズ、丸まった合わせエッジにも当てはまります。どれも表面の汚れではなく、形状の変化です。皮膜の前に見えるものは、皮膜の後にも見えます。皮膜がコントラストを上げるため、たいていは前より目立ちます。
亜鉛の装飾用 PVD は、単層ではなく層構成が普通です。電気めっきの銅/ニッケル下地が表面を平滑にし、耐食性を担います。PVD の上層が色と耐摩耗性を出します。この構成では、マスキングした面には地の亜鉛ではなくニッケルが出ます。
めっきを省いて亜鉛に直接 PVD を付けるのは、別の体系です。使用条件の軽い屋内の装飾部品なら成立しますが、耐食性と色の範囲は同じではありません。図面には層構成を書かなければなりません。めっきの厚さ、上層の厚さ、そしてどの面をマスキングするかです。「PVD」とだけ書いても、上層の下に何があるかは決まりません。
使える指示は四行です。基材と状態、皮膜前の仕上げ(Ra と Rz)、厚さを含む層構成、マスキングする面を書きます。そこに合否試験を加えます。ASTM D3359 の密着性が 4B~5B、ASTM B117 の中性塩水噴霧が 48 時間です。
指示項目 | 値 | 重要な理由 |
|---|---|---|
基材 | Zamak 5、ASTM B86 AC41A、鋳放し | 温度域を決めます |
皮膜前の仕上げ | Ra 0.5、Rz 2~4 | 皮膜は形状を写します |
層構成 | Cu/Ni めっき+PVD 上層、厚さを明記 | 耐食性と色を決めます |
マスキング面 | 合わせ面、ねじ、硬貨投入口 | 合わせ目に出るものを決めます |
密着性 | ASTM D3359、4B~5B | 合否だけで、解釈は入りません |
耐食性 | ASTM B117、48 h | 層構成を分け、色は分けません |
コーティング側の詳細は亜鉛ダイカストへの PVD、工程窓はPVD コーティングをご覧ください。