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アルミダイカストの表面仕上げ比較とコストガイド

目次
はじめに:アルミダイカストにおける表面仕上げの役割
アルマイト:電気化学的保護と外観向上
粉体塗装:機能部品に適した高耐久・意匠性コーティング
研磨:高級鋳物向けの意匠仕上げ
電気めっき:耐食性と導電性の強化
サンドブラスト/ショットブラスト:前処理と均一テクスチャ
クロメート化成皮膜:機能部品向けの低コスト防食
クリアコート:金属感を保ちながら酸化を防止
表面仕上げ:コストと用途適合の比較表
アルミ鋳造部品に最適な表面仕上げの選び方
表面処理の一体化:コスト効率のための生産合理化
実例:Huawei 電子筐体の表面最適化事例
まとめ:コストと性能は用途に合わせて整合させる

はじめに:アルミダイカストにおける表面仕上げの役割

表面仕上げはアルミダイカスト工程における重要なステップであり、部品の耐久性、耐食性、外観に大きく影響します。自動車用ハウジングからコンシューマーエレクトロニクスまで幅広い用途で、アルミダイカスト部品には機能要件と意匠要件に合わせた表面処理が求められます。

本ガイドでは、代表的なアルミダイカストの表面仕上げを比較し、一般的なコスト、利点、適用例を整理します。設計エンジニアや調達担当者が、性能と予算の両面から最適化するための実用データを提供します。

アルマイト:電気化学的保護と外観向上

アルマイト(陽極酸化)は、アルミ表面を緻密で耐食性の高い酸化皮膜へ変換する代表的な表面処理です。高い硬度とマット/サテン調の装飾性を両立できるため、コンシューマー電子機器ハウジング医療機器部品などに適しています。

主な種類:

  • Type I(クロム酸):皮膜が薄く、航空宇宙用途で使用。

  • Type II(硫酸):最も一般的。コスト効率が高く、染色にも対応。

  • Type III(硬質アルマイト):耐摩耗性・硬度が高い。

一般的なコスト:$0.10–$0.30 /cm²(膜厚・タイプにより変動)。

制約として、導電性が低下する点や、ADC12のような高シリコン系ダイカスト合金では、適切な封孔処理を行わないと仕上がりが不安定になりやすい点があります。

粉体塗装:機能部品に適した高耐久・意匠性コーティング

粉体塗装は、静電気で粉体塗料を付着させ、オーブンで焼き付けて硬く均一な塗膜を形成する方法です。耐食性、耐摩耗性、耐候性(UV)に優れ、自動車用鋳物屋外用途で多用されます。

メリット:

  • 色・質感の選択肢が豊富

  • 膜厚許容が比較的広い(約60–120 μm)

  • 高い耐久性

一般的なコスト:$0.12–$0.35 /cm²(塗料種、部品サイズ、形状難易度による)。

注意点は、小ロットで段取り費が割高になりやすいこと、損傷部の再塗装・補修が難しいことです。

研磨:高級鋳物向けの意匠仕上げ

アルミダイカストの研磨は、表面の凹凸や微細欠陥を除去し、鏡面に近い外観を得るための工程です。ユーザーが直接触れる部品や視認性の高い部位(例:プレミアム消費者向けアクセサリー、ディスプレイ金具)に不可欠です。

手法には、機械研磨、バレル(振動)仕上げ、化学光沢化などがあります。PVDと組み合わせることで、高級感と耐摩耗性を両立した外観にできます。

一般的なコスト:$0.20–$0.50 /cm²(研磨グレード、形状、工数による)。

課題は、作業負荷が高いことと、素地にポロシティが多い場合に外観品質を確保しにくい点です。

電気めっき:耐食性と導電性の強化

アルミダイカストの電気めっきは、ニッケル、亜鉛、クロムなどの金属層をアルミ表面に薄く析出させる処理です。導電性の向上、耐食性の強化、金属光沢の意匠目的で使われます。

主な用途:

メリット:

  • 滑らかな金属外観

  • 高い耐食性(特にNi–Cr系)

  • はんだ付け性や電気特性の改善が可能

一般的なコスト:$0.25–$0.60 /cm²(層構成・膜厚による)。ダイカスト部品では、亜鉛置換(ジンケート)や洗浄などの前処理が必要で、特にA360のようなシリコン含有量の高い合金では前処理要件が増え、コストが上がる場合があります。

サンドブラスト/ショットブラスト:前処理と均一テクスチャ

サンドブラストおよびショットブラストは、高速の研掃材で洗浄・スケール除去・粗面化を行う機械処理です。塗装・コーティングの前処理として使われることが多い一方、工業用途では単体の仕上げとして採用されることもあります。

メリット:

  • 低コストな表面洗浄

  • 均一なマット外観

  • 塗装・コーティング密着性の向上

適用例:自動車用ハードウェア工具・筐体部品、機械部品など。

一般的なコスト:$0.05–$0.15 /cm²(メディア種:ガラスビーズ、アルミナ、スチールショット等/面積/形状難易度による)。

制約として、単体では耐食性を付与できないこと、粗さが増して意匠部品に不向きな場合があることが挙げられます。

クロメート化成皮膜:機能部品向けの低コスト防食

クロメート化成皮膜(アロジンとも呼ばれる)は、化学処理によりアルミ表面に受動皮膜を形成する方法です。導電性を維持しながら耐食性を向上できるため、航空宇宙や電子機器で広く使われます。

主なメリット:

  • 低コスト・短時間で処理可能

  • 導電性を保持

  • 塗装下地として良好

用途:電子筐体航空機用ブラケット、放熱ハウジングなど。

一般的なコスト:$0.03–$0.08 /cm²。

一方で、粉体塗装やアルマイトと比べると耐久性・耐摩耗性は低めです。また、六価クロム系はRoHS対応の観点から三価クロム等の代替へ移行が進んでいます。

クリアコート:金属感を保ちながら酸化を防止

アルミダイカストのクリアコートは、外観の金属感を変えずに透明なバリア層で酸化を抑える仕上げです。ラグジュアリー用途やブランド重視の意匠部品に適しています。

代表用途:

クリアコートは耐久性と耐薬品性を高めつつ外観を保持できますが、均一な仕上がりには素地の均一性と前処理品質が重要です。

一般的なコスト:$0.10–$0.25 /cm²(樹脂種・硬化方法による)。

表面仕上げ:コストと用途適合の比較表

表面仕上げ

一般的なコスト/cm²

最適な用途

アルマイト

$0.10–$0.30

電子機器、医療機器

粉体塗装

$0.12–$0.35

自動車、屋外部品

研磨

$0.20–$0.50

高級・外観重視の可視部品

電気めっき

$0.25–$0.60

電装部品、クロム調外観

サンド/ショットブラスト

$0.05–$0.15

工業用途、塗装前の下地処理

クロメート化成皮膜

$0.03–$0.08

航空宇宙、電子機器、コスト重視の機能部品

クリアコート

$0.10–$0.25

金属感を活かす外観部品、ブランディング用途

アルミ鋳造部品に最適な表面仕上げの選び方

最適な表面仕上げを選ぶには、性能要件、外観期待値、コスト目標を明確にすることが重要です。例えば、耐食性が最優先の機能用途(例:産業機械部品)では、クロメート化成皮膜や粉体塗装が、コストと耐久性のバランスに優れた選択肢となります。

一方、ヘッドホンのヒンジ照明フレームのような外観重視の部品では、意匠要求を満たすために研磨やアルマイトが必要になることがあります。熱サイクルや摩擦がある部品では、硬質アルマイトやめっきが耐摩耗性の面で有効です。

主な判断要素:

  • 使用環境:屋外、浸水、薬品暴露の有無

  • 耐摩耗性:摺動や接触摩耗があるか

  • 導電性:電気的な連続性が必要か

  • 外観:見える部位か、顧客に触れられる部位か

  • 予算:許容できる部品単価はいくらか

多くの場合、複数処理の組み合わせ(例:研磨+クリアコート、ブラスト+アルマイト)で性能と外観を両立できます。ただし工程が増えるほど、リードタイムとコストが増加します。

表面処理の一体化:コスト効率のための生産合理化

複雑性とコストを下げるため、表面処理をワンストップのダイカストサービスに組み込む企業が増えています。工程間輸送の削減、ハンドリング損傷の低減、品質管理の一元化が可能になります。

よくある統合戦略:

  • コーティング前の後加工:めっき・塗装に適した清浄な公差面を確保

  • 複数品種をまとめたバッチアルマイト:色合わせの均一化

  • 研磨直後のクリアコート:鏡面の状態を維持

  • 導電性が重要な部品でのブラスト+化成皮膜の組合せ

鋳物素地と表面処理の相性を理解し、社内で表面処理の専門性を持つベンダーと協業することで、リードタイム短縮だけでなく、仕上げの安定性も向上します。

実例:Huawei 電子筐体の表面最適化事例

Huawei のアルミダイカストプロジェクトでは、筐体シェルに対して外観品質と耐食性の両立が求められました。初期サンプルは粉体塗装でしたが、ダイカスト由来のフローマークが残り、想定以上の不良率につながりました。

解決策として以下を組み合わせました:

  • 機械式のバイブレーション研磨

  • マットシルバー仕上げのType II アルマイト

  • 導通を確保するための接地ポイントの選択マスキング

結果:表面欠陥率を23%削減し、当初の粉体塗装仕様と比較して仕上げ単価を18%低減しました。

この事例は、部品設計、機能、数量に合わせて工程を最適化する重要性を示しています。

まとめ:コストと性能は用途に合わせて整合させる

アルミダイカスト部品に万能な表面処理は存在しません。最適解は、エンジニアリング、コスト分析、使用環境の組み合わせで決まります。PVDや多段研磨のようなプレミアム仕上げは高級消費財で価値を生みますが、工業用途やマス市場では、化成皮膜やブラストのような低コスト手法が依然として重要です。

コスト効率を最大化するポイント:

  • 設計段階から表面処理を織り込む

  • 鋳造工程と自然に統合できる仕上げ技術を優先する

  • 社内後工程を持つダイカストパートナーと組み、リードタイムとコストを削減する

表面仕上げは見た目だけでなく、性能、保護、長期価値に直結します。各手法の能力・限界・経済性を理解することで、品質・予算・量産目標に整合した意思決定が可能になります。

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